「ことば」の課外授業/西江雅之

ずっと前に買ったきりだったやつ。文体がですます調の語り口調で、読みやすいし、わかりやすかった。

バイリンガリズム」という現象や、それを分析するときの「得体の知れなさ」というあたりの話が、私が普段余り意識しない部分で、面白かった。確かに「ドイツ語とオランダ語バイリンガル」より、「東京弁与那国島の方言のバイリンガル」の方が凄いと思うけど、それは一般にバイリンガルとは呼ばれ難い。そもそも「『言語』をどのレベルでとらえるか」ということからしてはっきり決められないのだから、2言語を話せるといっても、その2言語がどのレベルに属するかで、一般的にバイリンガルと呼ばれ得るかどうかも揺れ動いてしまう。

「社会全体に見られる言語の使い分け」を指すダイグロッシアという現象も、とても面白いと思った。移民問題や、植民地の問題とも深く絡んでいるのだろう。

もう一つ「ランゲージ・スイッチング」というのが同じ章で紹介されていて、それは「小学校低学年くらいの子供に一時的に見られる、文章の中に句や文単位で2言語の表現が次々と入れ替わりに出てくる現象」であるが、子供たちはそのように2言語を行き来することで仲間うちの秘密保持や仲間意識の確認をしているそうで、それはいわゆる「若者ことば」に対して指摘されることと同じだと思った。

もう一つ、「翻訳というのは、制約の中での一種の『演奏』である」という部分があって、漠然と考えていたことをぴたりと言い当ててもらったようで、納得頻り。