亀は意外と速く泳ぐ@京都シネマ

平凡の非凡さとか、日常の幸福とか、そういうのがテーマのようにも、見えなくはない。

でも、そんな、テーマとか、メッセージとか、大層なことはどうでもいいじゃないか、とでもいいたげな、ゆるゆるとした、尚且つ少しきゅんとする映画だった。

夫が海外赴任中で、亀と2人暮らしの平凡馬鹿な主婦・スズメ(上野樹里)が、通称「100段階段」の手摺りで見つけた「スパイ募集」の貼紙(指先大。5ミリくらい。)。

書かれてあった番号に電話をして行ってみると、居たのはある国のスパイを名乗る夫婦(ふせえり岩松了)。

その場で平凡馬鹿っぷりを絶賛されて採用されたスズメにひとまず与えられた使命は、「今は特に何もないから、とりあえず普通に暮らして」というもの。

それまでと何一つ変わらない相変わらずの生活を、活動資金として渡された500万と「これはスパイ活動だ」という意識で、心持ちウキウキと過ごすスズメ。

でも、地引き網に参加したら死体がかかっちゃったりして、そしたら公安が動いちゃったりして、段々身辺がきな臭くなって来る。

そうこうするうち、緊急召集(町内放送の、「キャバレーファイヤーダンスは冬でも熱気むんむん」というのが暗号)までかかっちゃったりする。

集合場所に行ってみると、地下通路の隠し扉があって、スパイ仲間はそこに入っていこうとする。
でも、「何だか知らないけど上からの命令」で、スズメは街に残される。

っていう粗筋。これだけだと何のこっちゃという感じだが、そこに、親友クジャク(蒼井優)とか、スパイ仲間のラーメン屋サルタナ(味はそこそこ)の店主(松重豊)とか、よく海外旅行に出掛ける(その実暗殺のバイト?)銃の腕前がすごい豆腐屋村松利史)とか、正体は公安の協力者で、修理に行った家に盗聴機を仕掛けてまわる水道屋緋田康人)とか、「微妙な奥さん」と「微妙な息子」を持ち、若くしてカツラを着用している、スズメの初恋の先輩(要潤)とかが絡んで来て、もうどえらい情報量。なさそうだけど、ありそう。面白がれる所満載。


スズメのお父さんの「ニコニコ〜」が素敵。確か、渡る世間〜に出ている人なのだけど。あと、温水さんは何をやらせてもいいなぁと思った。今回は「セーラー服が好き」なパーマ屋さん。

それから個人的に、要潤の好感度がすごく上がりました。彼は、あの、誤用の方の「確信犯」ではないかと思われます。あの計算された前髪のかきあげ方。
スタッフロールには「要潤FC」てクレジットがあるし。「○○町の皆さん」とかじゃなくて、ファンクラブの皆さん。あ、ファンクラブじゃなくてフットボールクラブだったらどうしよう。