繰り返される諸行無常

カナリアを見に行った。

主演の2人、光一役の石田法嗣とユキ役の谷村美月の「目」が持つ印象的な力強さだけで、充分に成立する映画だと思った。
それから、えらくBGMの少ない静かな映画でもあった。


「『誰にも迷惑なんてかけてへん』とか言う奴おるけど、うち、あれがいっちゃん腹立つ。人間なんて生きてるだけで迷惑なんや」
「言葉にできひん理由なんて、そんなん理由ちゃうで」
といったユキの真っ直ぐな言葉に、ぐらっときた。
子供は本来、こういうものだろうと思った。
一部で今だに言われるような「純真」とか「無垢」とかいったステレオタイプな子供観は、大人が自分たちのご都合主義な理想を勝手に押し付けるかたちで貼りつけたレッテルに過ぎない。

坂口安吾だったと思うが、「親はあっても子は育つ」というのは、やや皮肉が効き過ぎているけど、言い得て妙だと思う。


母親の死を知ったあとの、あの結末には、若干「ついていけない」感じがしなくもなかったが、でも、それでもいい。彼は全てを「許す」と言ったのだから、もうそれで良いと思う。

妹と再会した時の光一の顔、兄を認識して階段を駆け降りた時の朝子の顔、光一が手を差し延べた時のユキの顔、みんな素晴らしかった。

あと、元信者たちの家(アパート?)にいた、ユキに折り紙で「飛ぶ鳥」を折ってあげる盲目のおばあさんが、非常に美しかった。出演シーンはそう多くなかったが、ものすごい存在感だった。名前を知らないし、恐らく初めて拝見したように思うのだけれど、有名な方なのかな。

あとは、個人的に西島秀俊の雰囲気が好きだった。

音楽・大友良英、エンディングテーマ・向井秀徳っていうのをまるで知らなかったので、エンディングで自問自答が流れ出した時にかなりの勢いでびっくりしたが、非常にぴったりしていた。

どちらかと言うと一人で見たいと思う映画だった。DVD出るのかな。