暗黒館の殺人/綾辻行人

暗黒館の殺人 (上) (講談社ノベルス)

暗黒館の殺人 (上) (講談社ノベルス)

暗黒館の殺人 (下) (講談社ノベルス)

暗黒館の殺人 (下) (講談社ノベルス)

ようやく。幻想ミステリ、というところかな。ただ、ちょっと、長すぎる。冗長とまでは言わないけれど、ひたすら続く奇妙な館の、奇妙な住人たちの、奇妙な行動の描写は、けっこうつらい。宴のところとかね。一人称についてのアイデアも、思わせぶりすぎて想像が付いてしまう。
もともと幻想小説、というふうにカテゴライズされるものを積極的に避けてきているからかもしれないけれども、なんかなぁ、と思ってしまう。十角館みたいなカタルシスはそうそう味わえるものじゃない、ということだろうか。

「一人の作家が一生のうちに半ダース以上の優れた本格推理作品を残すことはできない」
というような事をいったのは、誰だっけ。ヴァン・ダインだったかな。
とにかく、その言葉は正鵠を射ているのかもしれないと思わなくもない。
本格でなくても、推理小説でなくても、面白ければ何でもいい。「本格として」「推理小説として」云々というのは「面白いか/面白くないか」の二元論に比べれば取るに足らない、どっちでもいいことだとは思う。でも、十角館の破壊力が強烈過ぎて(本格、新本格という言葉はこの作品で知った)、勝手に彼の書くものに「本格」を期待してしまっているのかもしれない。
それで、勝手に失望していれば世話はない。中毒患者みたいだ。

と、反省してみたりして。