不可触民と現代インド/山際素男

不可触民と現代インド (光文社新書)

不可触民と現代インド (光文社新書)

「今なお残るカースト差別と勇敢にも戦う指定カースト出身の人々」という非常にわかりやすい主題に基づいて、個々の具体例をたくさん挙げた本。という性質上、ものすごいあっさり読めた。

しかし、あくまで入り口というか、これだけではなんともね、という感じ。

『マハートマー・ガンジーの欺瞞』なんていう小見出しの部分をはじめ、とにかく全編通して、

  • 不可触民を「ハリジャン」などと呼んだ一方で、その差別自体を撤廃しようという意志を終ぞ持つことのなかったガンジー 
  • 自らも不可触民出身で、類まれなる努力によって出自を克服し、同胞の地位向上・解放のために心底力を尽くしたアンベードカル


っていうわかりやすい二元論に貫かれていて、むしろ「そこまでのこたぁないだろ」的な反動・逆効果を生み易いのではないかとさえ思える。この「わかりやすさ」はちょっとした罠だと思う。


しかし、啓蒙的というか、アンベードカルの世間への紹介というような意味合いでは、手軽だし、読みやすいし、良いのではないのかしらん。そういう意味では「新書」という形態が最適だろうし。



ともかく、カースト制度って、なんなんだ。

わかるようでわからない。読めば読むほど何だか混乱していく。

あぁ、これは、私には理解しきれないかも、ということだけはわかる。

理論云々でなく、ニュアンス的に。



あぁぁー『愛すべきバカ』的なものに触れたい。英気を養いたい。