観念論ってなに?
- 作者: 冨田恭彦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/11/19
- メディア: 新書
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昨年買ったはいいけど読んでなかったやつ。
最近ヒューム絡みでバークリーの名前を聞いたこともあって、読んでみようかなと。
大学で冨田先生の講義を取っていたことがあるが、まるで気取ったところのない、目のキラキラした少年のような方という印象である。
さらに、「小難しいことをかみ砕いてわかりやすく伝える」ことにかけては抜きん出ていて、「教育者」としても、かなり信頼の出来る人という感じ。
この本もかなりわかりやすかった。議論のポイントとなる部分は何度も登場人物の口を借りて確認され、哲学的な用語も非常に丁寧に解説されていて、観念論が何であるか、辞書的な定義以上のものは何も知らない状態だったがすんなりと読めた。
結論としては、バークリは『物やその性質が観念であることを示すために、実は心の外というものを前提して』おり(207頁)、さらに『ロック流の物質肯定論では、「物そのもの」は概念的に思考されているのに、バークリはそれを心象として扱い、そこから「物そのもの」ないし「物質」の考えが矛盾したものであることを結論づけ』ており(208頁)、『バークリの観念論はロック的物質肯定論の論理を歪めて成立したもの』と言えるが(211頁)、一方でバークリが『アルシフロン』で示した「因果的ではなく、記号的な世界」という見方は観念論の歪みとは独立に検討し得るし、また検討するに値するものである。ということかな。
なかなか問題提起的な結論で、面白かった。
あと、個人的にすごく思ったのは、17、18世紀の哲学を避けて通っていたら何もできないかもしれないということ。
何読んでてもロックとかデカルトとかスピノザとか出てくるもんなぁ。
で、小説の形式になってると議論のどこまでが著者の見解なのか一瞬疑問に思ってしまうのはミステリに毒され過ぎですかそうですか。